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つれづれ猫日記

初対面でいきなり…

おしりもじもじ。
心ここにあらず。
落ち着かない、おじいちゃん。
取材している当方としては
「何か、失礼なこと、言っちゃったのかなあ」
ちょっと心配になる。

すると…
「まあ、カメラ(取材)はええかね。早く家へ帰りたいんだけどねえ」
と名古屋弁で、にこにこおっしゃる。
「え~? やっぱり取材拒否?」
当時、駆け出しだったワタシ。
ディレクターにどなられたらどうしようとドキドキした。

おじいちゃんの名は、杉本健吉。
そう、あの画家の杉本健吉さんである。
「今朝ね、ものすご~く。きれいにぼたんが咲いたんだわ~。早く家へ帰って描きたいんだわ~」
そうか~。だからもじもじしてたのか~。
なんだ~。当方の取り越し苦労だったのだ~。

杉本さんのモットーは「感激したら即描く」こと。
「感激は受胎」と常々おっしゃっているのだから。
もう描かなきゃいられない。根っからの画描きさん。
まるで子どもが純粋に描きたいように、心も体も動く方なのだ。

こんな人、初めて会った。
当時、80歳になられたばかりだったと思う。
このエネルギーはすごい! 一体、どこからくるのだろう?
圧倒されたのをよく覚えている。


あれから20年以上が経った。
杉本さんも98歳で亡くなられた。

しかし、またお会いすることができたのである。

NHKのアーカイブス映像を再構成、新たな切り口で創る
「蔵出し劇場 あの人からのメッセージ」をまた担当させていただいた。
今回は杉本健吉さんと、その親友、写真家の入江泰吉さんとの
組み合わせ。

お二人は奇しくも同じ年、戦後41歳の時に、奈良で知り合い、その友情は終生つづいた。
生涯を奈良に捧げたともいえる入江さんと、「奈良の杉本」と評されるほど「惚れて」奈良を描きつづけた杉本さん。残された膨大なお二人の番組を観、エピソードをうかがうにつけ、思うことはひとつ。
縁(えにし)の不思議さと大切さ。
お二人とも素晴らしいアーティストであることは間違いないが、杉本さんは入江さんが、入江さんが杉本さんがいなかったら…と思う。心支えあう、また才能あふれた友人をもつことが、これほど人生を豊かに、またエネルギッシュなものにしてくれるものなのか。と。
そして、その出逢いは人生を折り返したあとでも、充分であるのだ。と。

私も、不惑近くなってからであい、普段は離れていてもときどき会っては刺激をもらう6人の仲間がいる。先日、その友人の一人が長年頑張っていた小説で賞をとり、皆で祝ったばかりである。ついだらけてしまうときは「こんなことをしていると仲間に申し訳ない」と励みになり、仲間に喜びごとがあれば、それはまた、自分のエネルギーになる。

仲間に出会ったのも縁なら、こういう仕事に就いたのも縁。
今回のように仕事をはじめたばかりの頃に出逢った「忘れられない人」に
もう一度番組で出逢えたのも縁といわずして何と言おう。

「あの頃のように、がんばりなさい。感激を忘れちゃいかん」と杉本さんに言われたような気持に勝手になっている私なのである。

そんな初心に帰った番組は
NHK BS2 「蔵出し劇場 あの人からのメッセージ 友と二人 大和の心を愛す ~入江泰吉と杉本健吉~」19:45~20:25 で放送します。

お時間あればご覧くださいませ。
by buchi128 | 2009-02-17 08:20 | 初めてのツボ
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今日も道端で出あった気になる猫と、きままなおしゃべり

by buchi128
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